DAOのビジネスモデルとは?収益を生み出す仕組みと成功事例を紹介

「DAOビジネスモデルとは?」「具体的な適用例や導入手順は?」などと気になっていませんか?

DAOはブロックチェーン技術を基盤にした分散型自律組織で、従来の企業組織と比べて高い透明性と効率性を提供する点が魅力の1つです。DAOは参加者全員の投票によって運営ルールが定められ、意思決定が行われます。

本記事では、DAOの基本概念からビジネスモデルの種類、活用事例について解説します。具体的な導入手順まで詳しくまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。

目次

DAOビジネスの基本

DAOビジネスを始めるには、基本を押さえておくことが大切です。ここでは、DAOの概要に加えてDAOが企業にもたらす利点についてまとめます。

DAOとは何か?

DAO(分散型自律組織)は、ブロックチェーン技術を用いて運営される組織形態です。従来の組織と異なり、DAOには中央集権的な管理者がいません。

代わりに、スマートコントラクトと呼ばれる自動化されたプログラムによって、組織の運営ルールが定められています。例えば、組織の運営に関する提案があった場合、全メンバーが投票を行い、過半数の賛成があれば提案が承認されます。

これにより、DAOは民主的で分散化された意思決定プロセスを実現するのです。組織の意思決定や資金の動きはブロックチェーン上に記録されるため、高い透明性を維持して不正を防げます。

DAOビジネスが企業にもたらす利点

DAOビジネスでは、意思決定プロセスが分散化されているため、トップダウン型の意思決定に比べて民主的です。参加者全員が投票を通じて意思決定に関与できるため、多様な意見を反映しやすくなります。

DAOはブロックチェーンを介して世界中から参加者を募ることができるため、グローバルな事業展開が可能です。DAOビジネスは、従来の企業にはない新しい価値を生み出します。

もし企業がDAOを活用すれば、プロジェクトの資金調達をトークン発行によって行い、投資家と直接的に対話することも可能です。外部の影響を受けずに、企業の目標に沿った投資が行えます。

日本で合同会社型のDAOが設立可能になった

2024年4月より、日本で合同会社型のDAO(分散型自律組織)を設立することが可能になりました。これにより、DAOに法的地位が与えられ、契約の締結や不動産の取得などが可能になりました。

従来のDAOは法的地位が不明確でしたが、合同会社型のDAOでは、出資者全員が無限責任を負う必要がなく、有限責任制が適用されます。つまり、出資額以上の責任を負うリスクがありません。

この制度改正の実現には、自民党のweb3プロジェクトチーム、弁護士チーム、衆議院法制局のスタッフらの尽力が大きく貢献しました。金商法の制約解除や社員情報の公表要否など、複雑な法的論点を乗り越えることができました。

今後の合同会社型DAOの活用は未知数ですが、古民家再生や地域ボランティア、ゲーム業界など様々な分野から関心が高まっています。

DAOの主なビジネスモデル

DAOを立ち上げる目的はさまざまで、ビジネスモデルも種類ごとに異なります。主なビジネスモデルをまとめると以下の通りです。

  • プロトコル・ガバナンス型
  • 投資・ファンド運用型
  • クリエイター・コミュニティ支援型
  • 社会貢献・公共財提供型
  • 分散型サービス提供型
  • 研究開発型

それぞれ詳しく解説します。

プロトコル・ガバナンス型

プロトコル・ガバナンス型のDAOは、ブロックチェーンやその他の分散型技術のプロトコルやルールを管理・改善することを主な目的としています。プロトコルとは、インターネットの基盤とも称され、ネット通信内で取り決められている共通ルールです。

トークンを保有することで、プロトコルの更新や新機能の追加、トークン供給量の調整などの重要な意思決定に参加できます。民主的な組織として柔軟に機能の変更ができ、ニーズに合わせて常に新しい状態を維持できます。

プロトコル・ガバナンス型DAOは、分散型技術の発展とともに、コミュニティの関与を促進する役割を担っています。

投資・ファンド運用型

投資・ファンド運用型のDAOは、メンバーから出資を募り、資金をさまざまな投資対象に運用することを目的としたDAOです。トークンホルダーは投資案件の選定の際に参加し、どの案件に資金を配分するかを共同で決定します。

運用によって得られた利益は、トークン保有割合に応じてメンバーに分配されます。リスク分散による安定したリターンの獲得と、透明性の高い共同意思決定によるガバナンスが両立されている点が特徴です。

メンバー全員がプロの投資家のように活動し、高い運用益を得ることが期待できます。

クリエイター・コミュニティ支援型

クリエイター・コミュニティ支援型のDAOは、アーティストやデザイナーなどの創作活動を資金面で後押しすることを目指すDAOです。クリエイターの作品を審査し、優れた作品に対して資金提供や販売支援を行います。

支援を受けたクリエイターは経済的な負担がなくなり、アイデアを存分に発揮して創作に専念することが可能です。作品の販売などで得られた収益の一部がDAOに還元されるため、メンバーにもインセンティブが与えられる仕組みです。

DAOの活動を通じて、多様な創造性が育まれ、新しい文化が生み出される可能性があります。

社会貢献・公共財提供型

社会貢献・公共財提供型のDAOは、社会課題の解決や公共財の提供を主な目的として設立されるDAOです。環境保護や教育支援、医療アクセスの改善など、さまざまな分野での活動が想定されています。

DAOに参加するメンバーは活動方針の決定や資金調達に関与し、コミュニティの意見を反映させながら事業を運営していきます。透明性も高く、公共の利益が最大化されることが期待できます。

収益モデルとしては、企業や個人からの寄付の募集やクラウドファンディングなどによる資金調達が一般的です。

分散型サービス提供型

分散型サービス提供型のDAOは、分散型金融(DeFi)サービスや分散型アプリケーション(DApps)などの提供を主な事業としています。中央集権的な単一の管理者に依存することなく、サービスをコミュニティベースで運営するDAOです。

メンバーはサービスの提供方法や利用ルール、手数料設定などの運営ポリシーについて、共同で意思決定に参加します。サービスの利用料収入はメンバーに分配されるため、自らがサービス提供者でもあり、受益者でもあるという関係性です。

効率性と透明性が高く、新しくて斬新なアイデアも容易に実現できる環境が整っています。

研究開発型

研究開発型のDAOは、新しいテクノロジーやブロックチェーン技術の研究開発を主な事業分野としています。メンバーは研究課題の設定や資金調達、開発方針の決定に関与し、研究開発活動を共同で推進していきます。

資金源としては、グラント獲得やトークン発行によるクラウドファンディングなどが一般的です。革新的な技術が生み出されると、特許料収入などからメンバーに報酬が分配される仕組みとなっています。

研究開発分野におけるDAOの活用により、独創性の高いアイデアがオープンに育まれ、より自由な発想のもとで困難や課題を解決する可能性が高まります。

DAOビジネスの成功事例

DAOの仕組みを生かしてビジネスに生かしている企業は年々増え続けています。ここでは、DAOビジネスの成功事例についてまとめます。

MakerDAO

MakerDAOは暗号資産を担保として預け入れ、米ドルとの価値連動を目指す「DAI」というステーブルコインを発行するプロジェクトです。暗号資産市場の高い価格変動リスクを抑えつつ、分散型金融(DeFi)の中核として機能しています。

DAIは主にイーサリアムなどのデジタル資産を担保にして発行されており、価格の安定性が期待されているプロジェクトです。MakerDAOのガバナンストークン「MKR」を保有することで、プロジェクトの運営方針や仕様変更などに関する意思決定に参加できます。

MakerDAOはDAOの持続可能な運営体制を確立することで、従来の中央集権型金融システムに対する分権化された代替案を提示しました。ブロックチェーン技術の可能性を広く示す事例として、高い評価を受けています。

Nouns DAO

Nouns DAOは、NFT(非代替トークン)を保有することで運営への参加権が得られるユニークなDAOモデルを採用しています。意思決定全てがNFTホルダーによって行われることから、「もっともDAOらしいDAO」とも評されているプロジェクトです。

ただし、2023年には内部での対立からハードフォークが発生するなど、新たな課題にも直面しています。DAOの持続可能性や内部統治の問題を浮き彫りにし、分散型ガバナンスの実際のリスクと可能性を示しました。

それでもNouns DAOは、分散型組織の新しい形を模索し続けており、動向は多くのデジタル資産関係者に注目されています。

Ninja DAO

Ninja DAOは日本発のDAOプロジェクトで、特定のNFTコレクションを中心に形成されています。他のDAOと同様、NFT保有者にガバナンス権限が与えられます。

日本国内のコミュニティに焦点を当て、ローカルでのブロックチェーン技術の普及を目指しているDAOです。Ninja DAOはNFTを活用した新たなビジネスモデルの構築を目標に掲げ、DAOが地域社会に対してどのように機能するかを探求しています。

DAOと地域コミュニティとの相互作用のモデルケースとして、他のDAOにも影響を与える人気プロジェクトと言えるでしょう。

DAOビジネスを始めるまでの手順

DAOを始めていくのであれば、具体的な手順を知る必要があります。具体的な手順をまとめると以下の通りです。

  1. 解決したい課題や問題を明確化
  2. コミュニティの形成
  3. トークン設計
  4. ガバナンスモデルの構築
  5. 技術基盤の構築

それぞれ詳しく解説します。

解決したい課題や問題を明確化

DAOビジネスを始める際に最も重要なのは、解決したい具体的な課題や問題を明確に特定することです。DAOの目的やビジョンを定義する上で欠かせません。

対象とする業界や分野における問題点を深く分析し、非効率性や不公平性、社会課題などを洗い出します。例えば、金融業界であれば中央集権型システムの限界や情報の非対称性、アクセスの不平等などが挙げられるでしょう。

問題点を明確にすることで、DAOがどのような価値を提供できるのか、なぜDAOが必要なのかが明らかになります。

コミュニティの形成

DAOはコミュニティ主導の分散型組織であり、成功するかは目的に共感するメンバーの参加と協力に大きく依存しています。DAOを機能させるためには、志を同じくする人々が集まり、強固なコミュニティを形成することが不可欠です。

そのためには、オフラインでのイベントを開催するなど、多様な方法でコミュニティ形成に取り組む必要があります。コミュニティ内で積極的なコミュニケーションをとり、メンバー同士の信頼関係を築くことも重要です。

DAOの理念に共感し、活発に参加してくれるメンバーを集めることができれば、DAOは大きな力を発揮できるでしょう。

トークン設計

DAOにおいて、ガバナンストークンは意思決定や報酬分配の中核を担う重要な要素です。そのため、トークンの設計は慎重に行う必要があります。

発行量や分配方法、ロックアップ期間など、様々な要素を綿密に検討して公平性と持続可能性を備えたトークン設計を行うことが大切です。例えば、発行量が過剰だとトークンの希少性が失われ、価値が下がってしまう可能性があります。

また、分配方法が不公平だと参加者のモチベーションが下がり、DAOの発展が阻害されてしまうでしょう。MakerDAOのように最大発行量を定め、一定のロックアップ期間を設けるなど、トークンの価値を維持するための工夫が必要です。

ガバナンスモデルの構築

DAOの中核をなすのが、ガバナンスモデルです。ガバナンスモデルは、DAOにおける意思決定プロセスや投票ルール、提案方法などを定めた仕組みのことを指します。

効率的で公平なモデルを構築することは、DAOの長期的な健全性と発展に直結する重要な課題です。ガバナンスモデルを設計する際は透明性や公平性、効率性のバランスを取ることが求められます。

技術基盤の構築

DAOを実際に運営するためには、安全で利便性の高い技術基盤が不可欠です。例えば、スマートコントラクトやフロントエンドアプリ、ガバナンスツールなど、様々な要素が含まれます。

技術基盤の構築はDAOの目的や規模に応じて、自社開発するか既存のオープンソースソリューションを活用するかを判断しましょう。例えば、Aragonを利用すれば開発コストを抑えられ、信頼性の高い技術基盤を構築できます。

一方で、独自の機能が必要な場合は、自社開発も検討しなければなりません。ユーザーにとって使いやすいインターフェースを設計し、利便性を高めてもらう必要があります。

DAOビジネスの成功には、技術基盤の構築が極めて重要な役割を果たすと言えるでしょう。

DAOのビジネスモデルが持つ課題

新しい合同会社型DAOが発足可能となったため、DAOのビジネスモデルには注目が集まっています。しかし、DAOには以下の課題点があるため注意が必要です。

  • 意思決定に時間がかかる
  • 仕組みを理解するまでに時間がかかる

それぞれ詳しく解説します。

意思決定に時間がかかる

DAOのビジネスモデルでは、意思決定に時間がかかるという課題があります。すべての決定がコミュニティのメンバーによる投票を必要とするため、意思決定に時間がかかってしまうのです。

大きなコミュニティでは多様な意見と利害が交錯し、合意形成までの時間が長くなることがあります。例えば、重要なガバナンス変更やプロジェクトの方向性を決める際には、広範な討論と複数ラウンドの投票が必要になることが一般的です。

意思決定の遅延は、プロジェクトの迅速な進行を妨げ、市場の機会を逃す原因にもなり得ます。効率的な意思決定プロセスの設計は、DAOの運営において重要な課題となります。

仕組みを理解するまでに時間がかかる

DAOを運用する上でのもう1つの大きな課題は、仕組みの複雑性です。DAOのビジネスモデルは従来の企業構造とは異なり、ブロックチェーン技術と密接に関連しています。

例えば、スマートコントラクトの動作原理やガバナンストークン、分散型自律組織の法的地位などを理解するのは時間がかかります。外部からの監査や透明性の保証に対する理解が不足している場合、信頼性の確保に課題を抱える場合も多いです。

教育と情報の普及が、課題を克服する鍵となります。

DAOのビジネスモデルを理解して導入しよう

DAOはブロックチェーン技術を基盤にした分散型自律組織で、従来の企業組織と比べて高い透明性と効率性を提供する点が魅力の1つです。DAOは参加者全員の投票によって運営ルールが定められ、意思決定が行われます。

DAOのビジネスモデルを理解して導入すれば、従来のビジネスモデルでは達成が困難だったビジネスも実現します。ただし、導入するまでに多くの課題を解決する必要があるため、専門家の意見を取り入れるべきです。

DAOやNFTの導入をご検討の場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

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